アンガーマネジメント研修
誰も虐待したくて介護士になった訳ではない
アンガーマネジメントファシリテーターの澤田慎一郎です。
株式会社グッドサービスの福祉部門「ケアパーク」で相談員を務めながら、アンガーマネジメント講師として、企業や介護・福祉関係の皆様、地域の皆様などにアンガーマネジメントをお伝えする活動をしています。
今回は少し重いテーマですが、私がアンガーマネジメントを伝える中で実際に出会った、ある介護福祉士さんのお話を通して、
「高齢者虐待を防ぐために、介護する側の心も守る」
ということについて考えてみたいと思います。
「呼んでいただけること自体がありがたい」
私がアンガーマネジメント講師として活動する中で大切にしていることがあります。
企業研修や職員研修などでは、人数や研修時間、内容などをご相談したうえで講師費用をいただいています。
一方で、地域サロンや小規模な施設、ボランティア団体などでは、県や市などの規定によって予算が決められていたり、そもそも研修に使える予算がほとんどなかったりすることもあります。
そんなとき、弊社の山村社長から言われた言葉があります。
「声をかけていただけるということは、ありがたいこと。何か一つでもお役に立てるなら、社会資源の一つとして活動してください。それで『GOOD!』『良かった!』と喜んでいただけたら、グッドサービスの想いとも一致するから」
この言葉もあり、すべてのご依頼に対応できるとは言い切れませんが、できる限りそれぞれの事情に合わせ、柔軟にアンガーマネジメントをお伝えできるよう努めています。

ある介護福祉士さんから聞いた「苦しさ」
そんな活動の中で、ある住民サロンでアンガーマネジメントについてお話しする機会がありました。
そこに、一人の介護福祉士さんが参加してくださいました。
お話を伺うと、その方は介護現場での自分自身の対応について、とても苦しんでいらっしゃいました。
夜勤中。
疲労と眠気が重なり、やらなければならない仕事もたくさんある。
そんな中で、認知症の利用者さんが何度も歩き回ったり、
「ご飯はまだ?」
と起きてこられたり、介護を拒否されたりする。
一つひとつであれば対応できることでも、疲労や焦り、忙しさが積み重なったとき、感情を抑えられなくなることがあったそうです。
そして、不適切な言葉を発してしまったり、利用者さんへの対応が乱暴になってしまったりしたことがあったと話してくださいました。
その方は、それを正当化していたわけではありません。
むしろ逆でした。
「利用者さんにも、ご家族にも申し訳ない」
「なんで自分はこんなことをしてしまったんだろう」
「介護職として自分はダメなんじゃないか」
そんな思いを抱え、自分自身を責め続けていたのです。

高齢者虐待は、もちろん許されることではありません
ここは誤解のないように、はっきり書いておきたいと思います。
高齢者虐待は決して許されることではありません。
身体的な虐待だけではなく、暴言や威圧的な態度などによって利用者さんを傷つけることも、あってはならないことです。
利用者さんの安全と尊厳を守ることは、介護に携わる者にとって非常に大切なことです。
ただ、そのうえで私が伝えたいことがあります。
多くの介護職は、虐待をするために介護の仕事を選んだわけではないということです。
「高齢者の笑顔が見たい」
「困っている人を支えたい」
「介護という仕事を通して誰かの役に立ちたい」
そんな思いを持って介護の世界に入った方は、たくさんいらっしゃると思います。
しかし介護の仕事には、ときとして、その思いさえ見失いそうになるほどの負担が重なることがあります。
「優しくしたい」のに、できなくなる瞬間
人手が足りない。
休憩が十分に取れない。
夜勤で眠い。
何度説明しても同じことを聞かれる。
こちらには時間がないのに介護を拒否される。
ほかの利用者さんからも呼ばれている。
ナースコールが重なる。
やらなければならない仕事が終わらない。
もちろん、これらは利用者さんの責任ではありません。
一方で、介護する側も人間です。
疲労、焦り、不安、プレッシャーなどが積み重なれば、怒りの感情が生まれることがあります。
そして、その怒りに自分自身が支配されてしまったとき、本来なら絶対に言わないような言葉を発したり、してはいけない対応につながったりする可能性があります。
だからこそ、
「怒ってはいけない」ではなく、「怒りをどう扱うのか」を知っておくことが大切なのです。
高齢者を守る。そして、自分自身も守る
そこで役立てていただきたいのが、アンガーマネジメントです。
アンガーマネジメントは、怒らない人になるためのものではありません。
怒りは人間にとって自然な感情の一つです。
大切なのは、怒りを感じたときに、その感情に振り回されて後悔する行動を取らないこと。
言わなくてもよかった一言。
取らなくてもよかった態度。
やらなくてもよかった行動。
そうしたものを少しでも減らしていくために、怒りと上手に付き合う方法を身につけていきます。
もちろん、アンガーマネジメントだけですべての高齢者虐待を防げるわけではありません。
人員配置や勤務環境、組織としての相談体制など、職員個人の努力だけでは解決できない問題もあります。
だからこそ私は、アンガーマネジメントを高齢者を守ると同時に、介護する人自身を守るための一つのスキルとして知っていただきたいと思っています。
「怒りは感じてもいいんですよ」
先ほどの介護福祉士さんのお話を聞いたとき、私はこうお伝えしました。
「辛かったですね。話してくださってありがとうございます」
「怒りという感情そのものは、感じてもいいんですよ」
「自分を責め続けるのではなく、これから、その怒りを上手に扱える自分になっていきましょう」
そうお伝えすると、その方は涙を流されました。
それまで、とても苦しかったのだと思います。
自分がしてしまったことへの後悔。
利用者さんへの申し訳なさ。
介護職なのに、という自責の念。
誰にも相談できず、一人で抱えていたのかもしれません。
その姿を見て、改めて思いました。
利用者さんを守るためにも、介護する人が「苦しい」と言える場所が必要なのではないか。
研修を受けたくても、受けられない人がいる
今回の介護福祉士さんがアンガーマネジメントに興味を持った背景には、もう一つ事情がありました。
勤務先では、外部講師を招いてアンガーマネジメント研修を実施することが難しかったそうです。
そんな中、社会福祉協議会から地域の住民サロンでアンガーマネジメントの話が聞けるという情報を知り、参加してくださいました。
私はこのお話を聞いて、
「必要としている人に届けること」の大切さ
を改めて感じました。
大きな法人だから研修ができる。
予算がある施設だから学べる。
そうではなく、小規模な介護事業所で働く方にも、地域で介護をされている方にも、必要としてくださるのであれば可能な範囲で届けていきたい。
それが今の私の思いです。
高齢者虐待を防ぐために、介護する人の心にも目を向けたい
高齢者虐待のニュースを目にすると、とても悲しい気持ちになります。
当然、被害を受けた高齢者の安全と尊厳を守ることが何より大切です。
その一方で、虐待を防ぐという視点に立ったとき、
「介護する人が限界を迎える前に何ができるのか」
ということにも、もっと目を向ける必要があるのではないでしょうか。
誰かを責めるだけではなく、起きてしまう前に防ぐ。
「もう限界です」となる前に、怒りを扱う方法を知ってもらう。
そして、苦しくなったときにSOSを出せる環境をつくる。
高齢者を守ることと、介護する人を守ることは、決して別々の話ではない。
私はそう考えています。
ケアパークでは、高齢者虐待防止の一つの取り組みとして、これからも介護・福祉の現場をはじめ、幅広い方々へアンガーマネジメントをお伝えしていきたいと思っています。
企業研修、介護施設・福祉施設の職員研修、地域サロンなど、人数や時間、予算についてもまずはご相談ください。
すべてのご希望に添えるとは限りませんが、できる限り柔軟に、「何か一つでもお役に立てること」を一緒に考えさせていただきます。
アンガーマネジメントについて気になる方、職員研修をご検討の方は、ケアパークまでお気軽にお問い合わせください。
