家族の介護と上手に付き合い、これから先の自分の人生を後悔しないために知っておきたい知識
◊介護離職をすると職を失うだけでなく多くの負担がのしかかってくる◊
親の介護を理由に今まで通り働けなくなり、介護離職をする人が年々増えており社会問題となっています。75歳を超えると介護が必要な高齢者の割合が増えていきます。75歳の子供というとまだ40代から50代の現役で働いている方が大半です。結婚をしており、どちらかが専業主夫の場合は手分けをして介護をしながら今まで通り仕事を続けることも可能かもしれませんが、独身で近所に住んでいるのが自分だけ、さらに自宅で介護をするとなると今まで通り働くことは難しくなり、介護離職へ繋がってしまう可能性が高くなります。また介護の負担がすべて自分一人にのしかかってくる場合だと介護離職するだけでなく、時間的・精神的・金銭的な大きな負担になってきます。
◊介護離職後に正社員として再就職できるのは半数。自分の老後は?◊
どうしても自分一人で親の介護をしなくてはいけなくなり介護離職という道を選び、介護の必要性がなくなり再就職を試みても半数は正社員として就職できなかったというデータがあります。親の介護をする年齢は40代から50代はただでさえ就職先を見つけるのが難しい年代で、ましてや介護を理由に離職すると、仕事から離れている期間が長くなりブランクがあるためさらに厳しくなります。何とか再就職できたとしても介護離職する前より収入が減少した人が多く、経済的な負担が増しています。また、介護に集中していたことから社会との関わりが薄くなり、孤立し精神的な負担も増しています。親の介護は自分でしたいという思いを強く持っている方が多いですが、介護離職はご自身や家族への負担も大きくなります。介護離職後、介護の必要性がなくなったが再就職できず、貯金を切り崩して生活を続けていっては自分の老後も危うくなってきます。介護離職は精神的・経済的など様々な問題が生じます。慌てて介護離職という結論を出す前にまずは国の制度や会社の介護制度を利用し、上司と話し合い調整することから始めてはいかがでしょうか。
◊介護と仕事の両立に向けて国の制度を活用◊
要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者に対して与えられる介護休暇・介護休業という制度があります。介護のために仕事を休むことになると、その間基本的に給与は支払われません。介護にお金がかかる一方で無給となってしまうと金銭的負担が大きくなってしまいます。そのような状況を緩和するため所得補償のひとつとして雇用保険から介護休業給付金が支給される制度があります。高齢化が進むことによる介護離職を防ぐため政府は法整備を進めています。今回挙げている介護休暇・介護休業・介護休業給付金以外にも勤務時間の短縮措置や時間外労働・深夜業を制限する制度もあります。介護と仕事を両立できるよう様々な制度があることを知り、条件や決まりに関して把握しておくとよいでしょう。
【介護休暇】
要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護、そのほかの世話(買い物、通院の付き添い等)を行うために、1年に5日まで(対象家族が2人以上の場合は10日まで)取得できます。
【介護休業】
要介護状態にある対象家族を介護するためにする休業で、ある程度まとまった機関の休業となります。対象家族1人につき3回まで、通算93日まで介護休業をすることができます。
※対象にならない場合…介護休業や介護休暇を取得できる方は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者です。日々雇用される方は対象になりません。また、介護休暇は入社6ヶ月未満や週の労働日数が2日以下の場合、介護休業は入社1年未満の方、93日以内に雇用関係が終了する方、週の通定労働日数が2日以下の方は会社と労働組合や労働者の代表間で「労使協定」が結束されている場合は対象とならないので会社の規定を確認してください。
【介護休業給付金】
1回の介護休業につき雇用保険から介護休業開始賃金の67%が支給されます。介護休業は通算93日までのため最長で3ヶ月となります。介護休業中に給与が支払われている場合は介護給付が減額されます。雇用保険受給資格者、過去2年間で1年以上雇用保険に加入している方、介護休業開始において1年以上同事業主で勤務している、この3つの条件を満たしている方が受けることができます。申請は個人ではなく事業主からハローワークへ支給申請を行います。
◊じっくりと腰を据えて今後のことを考えることで介護と仕事の両立が可能になる◊
「仕事を辞めてでも家族の介護をしたい」という大切な家族を優先し、介護離職への道を選択する方もいますが、親側は「なるべく迷惑かけたくない。申し訳ない。」という思いもあります。すべての方が介護離職を回避できると思ってはいませんが、まずは介護休業法を活用し、一時的に仕事から離れ焦らずじっくりと今後の介護に向けて準備することが大切です。介護は終わりが見えず、長年に渡ることが多いです。家族の介護のことだけでなく、ご自身のこれからの生活や収入確保のことも考え、できる限り介護離職しなくてもよい方向に進めるよう介護休業法を活用し、在宅サービスの利用や施設入居を検討し介護と仕事の両立を目指してはいかかでしょうか?